らっしー&シナモン(らっしなもん)の飼い主Aです。
本業の『緩和ケア』啓蒙活動の続きで、医療用麻薬についてのご紹介です。
大前提に『医療用麻薬』は、覚醒剤やシンナー、大麻とは違いますので、切り離して考えましょう!
がんの患者さんの身体症状で一番に思いつくのが『痛み』だと思います。
そのほかにも、呼吸困難感、倦怠感、嘔気・嘔吐、食欲不振、せん妄などなど様々な症状が出る可能性があります。
心と体は繋がっているので、身体の症状が強いと心もつらくなるし、気持ちのつらさが強いと身体症状もさらに強く感じてしまうことがあります。
緩和医療の鉄則ですが、まずは身体症状のコントロールをすることが最優先事項です。
痛みは我慢していいことはありません!!
まず、医療用麻薬(オピオイド)とは、もちろん麻薬ではあるので、怖い印象を持ってしまう方が圧倒的に多いのが現実です。
麻薬は使うと癖になって依存症になるんじゃないの?
どんどん効かなくなりそうだから痛くても飲みたくないよ。
医師が必要な量を少量から処方するため、安全に使用できます。
痛みに合せて増量したり、作用の違う薬を併用して調整します。
我慢せずに痛み止めを使用することが痛みの治療のポイントです!
医療用であっても、麻薬と聞くと中毒になる印象が強いですよね。
ですが、医療用麻薬は、最小量から開始することもあり、痛みに対して必要で安全な量が処方されるため、故意に多量にがぶ飲みしなければ中毒になんてなりません!
医師の処方を信じて、痛みを我慢せずに医療用麻薬を使用しましょう。
我慢したって何一ついいことはありませんから。
医療用麻薬は、定期処方(決まった時間に飲む麻薬)とは別に、レスキュー(痛みが強くなったときに飲む即効性がある頓服)があります。
痛みというのは、医師や看護師に判断されるのではなく、実際に「痛い」と感じている患者さん本人の感覚なので、自分で痛みを評価することが必要です。
なぜ我慢せずに痛み止めを飲むよう指導されるかと言うと、医師はレスキューの使用回数から、患者に必要な1日の定期処方を調整するからです。
例えば、定期的に朝・夕に麻薬を10mgずつ内服していて、レスキューを1日に5回も6回も使用している状況があるならば、定期的に飲む麻薬を1回20mgずつに増量したりします(これはざっくりした例なので当てにしないでください!)
ざっくり言ってしまうと・・・
定期的に飲む麻薬はじんわりと長く効くタイプ。
レスキューは即効性があり作用時間はやや短いタイプ。
レスキューの使用回数が多い場合というのは、1日に何度も痛くなる体験を繰り返すということです。
定期的に飲む麻薬の量が適量になると、1日を通して痛みが強くなる体験は少なく済むため、痛みによる動作制限を減らすことが期待できます。
「痛いからお風呂は入れない」とか「痛いから日課の散歩は諦めよう」とか、痛みのコントロールが不十分な場合は、日常生活の満足度を明らかに下げてしまいます。
残りの人生を考えたとき、痛みを我慢することって大事でしょうか?
人それぞれの価値観があるので、否定はできません。
痛みに耐える自分に意味を見出す人もいるかもしれませんが、痛みで寝たきり生活を余儀なくされるのは、私にとってはつらいことのように思います。
適切に麻薬を使用することで、これまで大切に過ごしてきた生活の質を維持することが目指せます。
医療用麻薬を我慢せず使用することの大切さはわかっていただけたでしょうか?
そうは言っても、麻薬にも副作用ってあるでしょう?
副作用が怖くていまいち麻薬を飲む気にならないな。
利点だけであればいいのですが、やっぱりお薬なので「副作用」というものがつきものです。
ですが、今は麻薬の副作用対策にも力を入れているため、副作用に対処する別のお薬もあります。
医療用麻薬には三大副作用があります。
①便秘②嘔気・嘔吐③眠気の3つです。
副作用もコントロールしましょう!
①便秘
便秘はほとんどの患者さんに起こる副作用です。
医療用麻薬を使用すると便が硬くなって排泄しづらくなります。
食物繊維を多く摂ったり…という地道な対策だけでは、残念ながらコントロールが難しいことが多くあります。
その場合は、緩下剤を定期的に使用することで排便のコントロールをすることが大切です。
薬の副作用対策で、また薬を増やすのか…と思われる方もいると思いますが、便秘対策だけはずっと必要になりますので、上手に付き合っていかなれけばなりません。
②嘔気・嘔吐
嘔気・嘔吐は、吐き気止めを使用することで大部分軽減させることができます。
がんの治療をしている場合、抗がん剤の副作用など麻薬以外の原因で吐き気が起こる場合もあります。
制吐剤といっても種類がいくつもある(作用する場所が違う)ので、原因を特定して適切な制吐剤を選択すれば症状は和らげることができます。
医療用麻薬による嘔気・嘔吐というのは、麻薬を飲み始めたときや増量したときに起こりやすく、耐性ができるので、永遠に続くものではありません。
数日で耐性ができて吐き気はなくなると言われているので、吐き気止めは麻薬を開始したときから2週間以内で制吐剤は中止しても問題がないことがほとんどです。
③眠気
眠気は、一見大した問題ではないと思われがちです。
少しうとうとする程度であれば、様子を見ていいのですが、起きていないといけない場面でも眠ってしまう『不快な眠気』が問題です。
私の経験では、会話中にも寝てしまうほどの強い眠気を感じている患者さんもいました。
日常生活に支障があるほどの眠気は危険です。
薬が効きすぎている場合も考えられるため、麻薬の減量や使用する麻薬の種類を変更することが必要になることもあります。
眠気が起きやすいのも吐き気と同じく、麻薬の開始時や増量時となります。
そして、眠気も耐性ができるので、自然に気にならなくなることが多いです。
ちなみに、眠気の問題もあるので麻薬を使用する方は車の運転などは禁忌です!
がん性疼痛は、市販でも手に入るような痛み止め(NSAIDsやアセトアミノフェンなど)だけでは、コントロールできないことも多くあります。
抗うつ薬や抗けいれん薬などを使用することもあるくらい、様々な作用の薬を組み合わせて治療する必要があります。
痛みを我慢することで、生活の質を落とすことが一番残念なことだと私は思っています。
『がんと共に生きる時代』です。
副作用よりも効果が実感できることの方が多いので、医療用麻薬の使用は積極的にした方がいいです。
適切な使用方法であれば、中毒になる心配はありません。
無知ということが一番怖いと思います。
知らないから怖いんですよね。
正しく使えば、麻薬で中毒を起こしたり、麻薬が全く効かなくなることはありません。
麻薬にも種類はあり、副作用が強く出る場合や効果がいまひとつだという場合は、種類を変更することもできます。
「麻薬は怖い」とか「痛み止めを使うといつか効かなくなる」という誤解のために、十分な疼痛緩和ができずにいる患者さんが、1人でも減ることを願います。
看護師として、正しい知識を持って疼痛コントロールをしていきたいと思います。
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