らっしー&シナモン(らっしなもん)の飼い主Aです。
今日はちょこっと本業の『緩和ケア』の啓蒙活動をしたいと思います。
緩和ケアってがんの末期ってイメージありませんか?
私も自分とは今のところ無縁な話だな~なんて思っていました。
ですが、緩和ケア認定看護師になって勉強したからこそ言えます。
緩和ケアって絶対受けた方がいいし、これからも受容は増える一方なんです。
臨床でよく患者さんに聞かれるのが、「緩和ケアって終末期医療ってことですよね?」という疑問です。
違います!!
個人的にはまったく違うとは言いがたいのですが、正確には違うんですよね。
私自身も以前は、がんの治療ができなくなった患者さんに行われるのが『緩和ケア』だという認識でした。
緩和ケアを本格的に学んだからこそ理解出来たので、一般の方には「緩和ケア=がんの末期」という認識であってもおかしくないと思います。
今の日本は、「2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代」だと言われています。
ちなみに、私の祖母は膵臓がん、母は胃がんです。
とっても身近な病気になりましたよね。
たしかアメリカの研究では、20年以上夜勤をした人は、夜勤をしていない人と比べると、約1.8倍乳がんの発症率が高いという結果が出ています。
ちなみに、看護師の平均寿命は64歳だとか、夜勤有りの看護師は寿命を10年縮めているという話も聞きますよね。
身を粉にして日夜患者さんのために働いても、自分は寿命を縮めて、しかもがんの発症リスクをあげていると思うと、看護師の仕事って報われない部分もあるような気がしてきますね(あまり大きな声では言えない本音)。
脱線しましたが、緩和ケアの対象は「がん患者」ではなく、「生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族」と定義されています。
生命を脅かす病って一体何⁉って思いますよね。
これは、病名を限定しないということなのですが、イメージしやすい病名を書いてしまうと、がん、AIDSがわかりやすいと思います。
慢性心不全やCOPDなど徐々に悪化していく病気だって、いずれは生命を脅かしますよね。
病名を特定して対象を決めるわけではないのですが、「がんじゃないから緩和ケアを受ける資格がない」というわけではありません。
ちなみに、以前は患者だけが対象でしたが、今は「患者とその家族」とはっきりと家族も対象に加えられています。
そして、何をするのかというと、「痛みや苦しみを予防したり、和らげたりするアプローチ」のことを緩和ケアと言います。
痛かったら痛み止めを使ったり、薬に頼らず心地よいと思うタッチングや温罨法などの看護ケアを行い、気持ちがつらいときには気持ちの表出を促し受容・共感、必要であれば薬剤調整を行い、気持ちのつらさを和らげる。
患者によって、適切な治療やケアを考えて介入することが緩和ケアです。
じゃあ、緩和ケアっていつから始まるのか?
以前は、「がんの治療が効かなくなったとき」でした。
(緩和ケアの対象は、がん患者に限らないのですが、今回はわかりやすくするために、がん患者への緩和ケアについて記述します)
医師から「抗がん剤が効かなくなったから、がんの治療は辞めましょう」と言われてから、緩和ケア病院へ転院していく患者さんも多くいました。
つまり、がんをやっつける治療をする場所と、緩和ケアを受ける場所は違ったんです。
あの頃は「がんの治療ができなくなった途端、医者から見捨てられた」と言う患者さんは、今より遙かに多かったと思います。
ですが、今は違います。
がんと診断されたときから緩和ケアは始まります。
がんの告知の場面には、極力専門家(がん専門看護師や緩和ケア認定看護師、がん化学療法看護認定看護師、がん放射線療法看護認定看護師など)が同席できるように力を入れている施設も増えています。
そして、がんの告知でつらい思いをした患者や家族のサポートを早期から開始しています。
病院によっては、主科(消化器がんなら消化器科医、肺がんなら呼吸器科医など)の医師と緩和ケア医が併診する取り組みをしている施設もあります。
なぜか?
早期から緩和ケアを始めた方が、生命予後が長くなったという研究もあるからです。
ただ、苦しい時間が引き延ばされるのではなく、症状をコントロールしながら、よりよい終末期の時間が過ごせるようになったということですね。
先述したとおり、「2人に1人ががんになる時代」です。
受容は年々増えていますし、緩和ケアの重要性も理解されるようになってきました。
医者に見放された行き先が「緩和ケア」だった時代は終わり、がんの治療と並行して、病気が分ったときから行われるもう一つの治療が緩和ケアとなりました。
昔はがんになると諦めなければならないことも多かったと思います。
痛いけど我慢して寝ておくとか、吐き気があるから食べないとか、眠れないから寝ないとか、つらいのを我慢してうつ病になるとか。
外出を控えたり、趣味ができなくなったり、生きがいだった仕事を辞めなければならなかったり、様々な我慢をして、自分らしく生きられなくなる方も多かったはずです。
これだけがんになる人が多い今の時代は、「がんと共に生きていく」というのが大きなテーマになってきます。
緩和医療も進歩して、薬剤もどんどん開発されてきました。
具体的な緩和ケアの例をあげると、がん性疼痛に医療用麻薬を使い、嘔気や嘔吐には制吐剤を使い、不眠には睡眠導入剤や不眠症治療薬を使い、気持ちのつらさには医療者の面談や抗不安薬などを使う。
心身のつらさを和らげることで、かつては諦めていた「その人らしい暮らし」を維持しながら生きていくことが選べるようになりました。
どんどん機能は落ちていくと思いますが、自分らしさだけは維持して過ごしたいですよね。
それを叶えるお手伝いができるのが、『緩和ケア』なんです。
これからどんどん受容が増えていく分野だと思っています。
いまだに「緩和ケアって末期の人が受けるものでしょう?自分にはまだ早いので、緩和ケアなんて言葉も口にしてほしくない」と言われる患者さんがいるのが現実です。
痛みを痛いままに、常に吐き気と共に、眠れず気持ちが不安定になり、その人らしさがどんどん壊れていくのを見たことがあります。
そばで見ている家族にとってもつらい姿だと思います。
早期から緩和ケアを受けることで、生命予後も伸びるという研究結果が得られたことって本当に大きいことです。
私は将来、自分ががんになったとき、痛いときは医療用麻薬を使ってもらうし、眠れないときは睡眠薬を飲みたいし、吐き気がつらいときは吐き気止めも打ってほしいです。
そして、緩和医療をもってしても、これ以上は耐えがたいという苦痛で心身のつらさの限界を感じたときは、鎮静剤を打って寝かせてほしいと思っています。
家族には、別れの言葉を自分の言葉で先に遺しておきたいし、治療の限界は医療者と話し合って自分で決断したい。
緩和ケアを学ばなければ、自分が死ぬときのことなんてこれっぽっちも考える時間はなかっただろうと思います。
痛みでのたうち回って自分の気持ちが家族に伝えられないのはつらい。
最期のときは、家族や大切な人にちゃんと「ありがとう」と伝えてから死にたい。
そう思うようになりました。
病気になってから考えればいいと思う方もいると思いますが、冷静でいられる何も起こっていない今、あえて考えてみるのもいいと思います。
ちなみに私は、がんになったら積極的な延命処置はしないでほしいと早々に医療者に伝えるつもりです。
苦しいだけの時間より、私が私らしく、明るい気持ちで過ごすことを軸に決断していきたいなと思っています。
今日は、突然の緩和ケアのお話でした。
自分のことだけじゃなくて、家族や愛犬が病気になったときのこともたまに考えます。
病気でつらいのは、本人だけじゃありませんもんね。
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